会員自選作品 群像 2013年11月(抜粋)

   大阪 中川千都子
わたくしも馬車もカボチャになる時間
銀のペンどれも記念日最後の日
にんげんが布に変わってゆくところ
今日からはブドウも桃も悲しいよ
結論は紙飛行機にしてしまう

   神奈川 金子喜代
カンナ燃ゆ わたしが綺麗だった頃
ファンファーレ聴こえ結婚承諾す
仙人掌が昔の恋を聞きたがる
空仰ぎ鳥の自由を言う貴女(あなた)
ブラウスのバストトップに潜む自負

    秋田 石垣 健
負けた夜の満感飾が美しい
夢中にもなれず冷ややかにもなれず
輝いていたのは鍍金した昭和
どん底というが天国ではないか
淡きこと夢の如しとなりにけり

     鳥取 平尾正人
血の濃さを競って譲り合う介護
漏れ出した愚痴がなかなか止まらない
味方にも敵にもなってゆく絆
標語では清く正しく美しく
首を横に振るたび強くなる西日

     京都 穴原明司
あれが月 犬を静かに座らせる
稚魚群れるゆらりコンブの保育園
山門をくぐる 残暑の別世界
カステラも美人もやはり飽きが来る
しばし待て白馬に乗って参ろうぞ

     神奈川 杉山昌善
名月や尖った別ればかりあり
こざっぱり飛ばしています倫理観
秋桜父の扉を閉めました
トンカツのキャベツで終わる それもよし
愛なんてあるかないかを蟻に問う

     熊本 野上藪蔵
遠くへとたった一人のための風
風吹けど吹けども消えぬ臙脂の葉
幽明の差も薄くなる天の川
流れ方を忘れたらしい水の群れ
それぞれの島に渡った子供たち

     長野 宮本草子
カサカサと枯葉を歌う秋の肌
白髪もステキじゃないか芒の穂
いじわるも慈愛もあって杖である
押入れの秘密のぞいている西陽
花まるもばってんもない晩秋の道

       大阪 小川敦子
パスワードもらう合鍵もらうよに
恋すれば言葉はみんな嘘になる
見交わしたままで化石になる時間
好きと言うヘッドホーンの耳もとへ
手をあてるみそおちにある冬の海



他 会員49名作品掲載


BACK